美しいUDフォント

マツキヨです。

とあるきっかけでUDフォントについて学んでみました。
ET2017(組込み総合機器展)で実施したアンケート調査もその一環です。

「UDフォントの可読性」
今まで、組込み機器の画面デザインでクライアントからフォントの助言を求められると次のように回答していました。
「きちんと購入費が計上できるならUDフォントを使うとよいですよ」
「費用はイワタ、モリサワ、モトヤ、フォントワークス…フォント販売各社にお問い合わせしてください」
「購入費を確保できない場合は、無償のIPAフォントというのがあるので調べてください」
そして、深く考えずに「できるだけUDフォントにすべきです」と進言していました。

今回UDフォントについて調べてみたきっかけは、クライアントの開発責任者から「デザイナーはUDフォントを推奨するが、その有効性は検証したのか」と質問を受けたことです。
「飾りを少なくしてシンプルにしています」
「線の隣接部を広げて判別しやすくしています」
「道路標識や公共施設案内にも採用されています」
などと説明しましたが、どの程度UDフォントが読みやすいのかを自分自身がきちんと把握していないことに気付きました。

UDフォントの可読性に関する調査結果を調べると、「モリサワフォント(UD書体)のデジタルデバイスにおける可視性・可読性に関する比較研究報告(モリサワ株式会社)」「フォントワークスUDフォント エビデンス資料(フォントワークス株式会社)」が画面上での優位性を報告しています。
また、フェノメナエンターテインメントが実施したET2017(組込み総合機器展)でのアンケート調査でもUDフォントの優位性が確認できました。
UDフォントはPCの標準フォントに対して可読性が高いのは確実なようです。

「UDフォントのデザイン性」
一方、UDフォントの美しさ・かっこよさはどうなっているのでしょうか。
多くのUDフォントは水平・垂直基調の線を重視して、正方形に寄せたシルエットで文字が形成されています。
可読性を高めるためには、以下のフォントデザインが必要と言われています。
・字面をできるだけ大きくする。
・ふところを広くする。
・画線をシンプルにして飛び出しもなくす。
・濁点・半濁点を大きめにして隙間を十分に確保する。
・シルエットを共通化しない。
上記のようなデザインが現在販売されている全てのUDフォントに厳密に適用されているかといえば、そうではないようです。
UDフォントのデザイナーと会う機会があり、その点についてお話を聞きました。
曰く、「電機メーカーの依頼でUDフォントを開発した際、可読性を重視するとスタイリッシュではなくなる部分については、可読性を犠牲にしています」、「電機メーカーは、画面表示も製品デザインの一部である以上、スタイリッシュであることも重視しなくてはならないためです」、「この点については電機メーカーのデザイナーと激しい議論を重ねました」とのことでした。
フォントにおいて「美しい・かっこよい」と「可読性が高い」を両立させることは意外と難しい事のようです。
最近、ホームページ上のフォント選択に自由度が増したため、オシャレなんだけど読みにくいフォントを本文に使用しているケースが目につきます。WEBデザインを行う際もフォントの「美しい・かっこよい」VS「可読性が高い」について理解しておく必要があるのだと思います。

「みんなの文字フォントの”2″」
最近、イワタから「みんなの文字」というフォントが販売されていることを知りました。
科学的な「判読性」「視認性」「可読性」テストを行って完成させたUDフォントとのことです。
このフォントを見た私の第一印象は、数字の「2」が「かっこわるい(好みじゃない)」というものです。
スムーズに線がつながっていないし、上下のバランスが悪くてスマートに見えません。
Frutigerフォントの「2」がオシャレと思っていた身にとって、みんなの文字フォントの「2」は古臭い印象を受けました。
「みんなの文字」フォント開発は、金融商品や保険商品の詳細情報をきちんと伝えるようにするための目的で、表内に並んだ大量の数字に対する可読性を高めていると思われます。
確かに「みんなの文字」フォントの資料を見てみると、ゴチャゴチャした数表や規約文章内の数字の識別が楽に感じます。

だんだん、みんなの文字フォントの「2」が好きになってきました。

veri2

スマホやホームページ向けのUIデザインを行っていると、デバイスの標準フォントしか使わない環境に慣れてしまうため、フォントに対する興味が低下しがちです。

装飾的なグラフィックスが省かれている現在の画面デザインにとって、文字はとても重要な要素です。
今後も、UDフォントに対する理解とともに、「機能的な文字の表示方法」について探究してみようと思います。

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フェノメナエンターテインメント株式会社